光の射す方へ
朝から晩まで紀伊半島の海岸線を走り
ようやく三重県に入った二人は
新宮で夕食を済ませて1日目の
最終到達目標地点である
「道の駅まんぼう」を目指す。
参加者の方が「新宮越えてしまったら
ご飯食べるとこなんてどこにもないよ」
と教えてくれたので助かった。
確かに新宮の先からは
山→隧道(ずいどう)→山→隧道のみで
人の気配はなく、あるのは獣の気配のみ。

あ、「隧道」てトンネルのことです。
「ほな、トンネルって書いてよ!」って?
でも貴方、これで隧道覚えたでしょ?😉
繰り返し繰り返し山を登ってると
山の呼吸が分かってくる。
登らされる→頂上で隧道→
そこを降りさせられる→また登らされる→
頂上で隧道のリズム。なんとなく
「次のコーナー抜けたら隧道ちゃう?」
ておもうと大体あたる。

にしてもなんで隧道てこんなにも
人の心を鷲掴みにするのだろう。
何時間も街灯のない夜の山を登ってから
現れる隧道の灯は心を灯してくれる。
光が僕たちが進むべき道を示してくれる。
薄れゆく意識で導かれるまま走ると
ようやく 道の駅まんぼうに到着した。

ちょうど0時数分前であった
(ちょうどちゃうやん)
ここではブルベのスタッフさんが
有人チェックをしてくれると同時に
事前に頼んでいたお弁当に加えて即席の
お味噌汁まで用意してくれていた。
身体より心が暖まる美味しさ。
多くの参加者がここで仮眠するとのこと。
とはいえ室内ではなくただの野外。
エマージェンシーシートなるものに
身体を包んで眠るのである。

一見、不審男性の焼死体のようであるが
まだ辛うじて息のあるケンユーである。
この時点でなんの眠気も無かったが
寝ようとしてみる。
周りはオジサンのイビキの大合唱。
田んぼから聞こえる蛙の鳴き声の大合唱とは
対極にある最も癒されない音の一つである。
午前1時の外は寒い。しかし
エマージェンシーシートの中は暑い。
そして夏の到来を告げる蚊の羽音。
オジサンのイビキとのハーモニーは最悪。
寒くて暑くて煩くて痒い。
これは辛すぎるので、寝るのは断念。
眠らなくても身体を横にするだけで
脚は楽になるので美しい星空見ながら
インスタで応援メッセージくれた全員に
コメント書きながら過ごして
2:00からまた走り出した。
向かうは漆黒の山。
残り280km地点。
〜つづく〜