高見峠
伊勢神宮外宮で挨拶を済ませて
さらに進み、チェックポイントだった
ファミマ勢和多気店を抜けて今回のコースの
ラスボス高見峠に向かう。
一睡もせずに450km走ってきてから
獲得標高1000mの山を気温30℃の中で
日差しを浴びながら登るのである。
ここが今回のコースの最大の難関。
そんなときにヤツが向こうからやってきた。
ブルベ最大の敵「睡魔」である。
暑いのに眠いのである。考えたら当然だ。
一睡もせずに400km走ってきたのだから。
しかし、目が覚めてない状態では
絶対に登りきれない。
なんとかして意識を現世に止めようと
身体のあらゆるパーツをつねるもすでに
痛点は麻痺しておりなんの痛みもない。
仲間に「歌を歌うといいですよ」と
言われてたのを思い出してベストアルバムを
聞きたくっているミスチルを歌うも
どの曲を唄っても、アルバム「深海」に
入ってそうな暗いアレンジになりむしろ
そのまま永遠の眠りにつきそうになる。
「暗いイノセントワールド歌唱選手権」
が開催されたら優勝できる自信があった。
ケンユーは頭から水を被るしかないと悟る。
しかしコンビニがない。知らないコースの
ブルベはこれが難しい。
しかしそんなこと考えてるうちに
そびえ立つ高見山が目前に迫ってきた。
ここを逃すともう自販機すらなくなる!
と判断したケンユーは自販機で
ペットボトルの水を購入して
頭から全量ぶっかけた。
これは効果覿面。30℃の気温からの
冷水は身体中に電流が迸った。
「覿面」といい「迸る」といい
私は「てきめん」「ほとばしる」とは
漢字で書けないことをここに記しておく。
目さえ覚めたら身体は動く。脚も回る。
あまりの暑さに何人かの参加者が
「この暑さはヤバい」
と山の手前の日陰で座って休む中、
「目の覚めてるうちにいけ!」
と急いで登り出した。
勾配自体はそこまででもない。
自分のペースでいいなら登れる。
すると1枚目の景色が見えてきた。

ピントアウトしてください。首がもげる
くらい上の方に美しいループが見えた。
ここまで散々登りたおした後に
「今からあの高さに登らなあかんの?」
とはなるが一方で
「あそこから見おろしたら綺麗やろうなぁ」
の期待度がしんどざを上回り、むしろ
モチベーションとケイデンスはあがる。
登り切って見た景色がこれである。


誰か下から登ってきたらいい写真撮るのに!
としばらく待つも誰も来ず。
高見峠の看板と頂上にあるトンネルを
写して、しばし休む。

この高見峠を抜けると、三重県松阪市から
奈良県吉野になる。今回初の奈良県入り。
あとは大阪に帰るだけ。
疲れて眠たくて身体中が痛い中
残り150km走るだけなのである。
〜つづく〜